といっても昔からあるクラーフ結合のチョーク負荷や抵抗の替りを定電流回路としたもので、真空管
アンプの場合は高電圧なので従来は半導体での定電流回路が難しかったのですが、今は高電圧用の半導
体も廉価に入手可能なので、費用とスペースの都合で半導体による定電流負荷を採用しました。
事前にバラックセットで試作して大体の特性は掴んでいたので、これなら実用性があると思い、冒頭
写真にある昔使っていたシャーシを再活用させて常用機として組んでみる事にしました。電源トランス
も古いものですが、OPTも同時代のものなので雰囲気としては合っているように思います。
また、このOPTは打消しの有無で顕著な違いが出るようにPP用のOPTを使いました。シングル
用は直流磁化に対処する為にコア組みがバットジョイントで、さらにギャップを設けてあるのですが、
この為に直流を流さない状態でも低域特性を左右するインダクタンスはさほど大きくありません。しか
しPP用は巻線に流れる直流はPP上下で打消し合いますし、バランスが崩れたとしても、通常の動作
ではシングル方式のような大電流が流れる事はありませんから、総じてPP用OPTのインダクタンス
は大きな値になるように設計されています。ですから本機のように低域特性を向上させる為に打消しを
掛ける使い方なら、PP用OPTの方が有利になります。
という訳で、本機は以前に作ったシングルアンプをOPTを載せ替えたりして改造したもので、それ
に打消し用の定電流回路を追加したものです。さらに低域特性が有利になるように内部抵抗が低くなる
三結としました。一方で、PP用のOPTをシングル用として使うと、前章のアンプのように高域特性
にアバレが出る恐れがあったので、カソードフォロワで出力管をドライブする事により、前段(正確に
はドライブ段と出力段の間)の高域特性を伸ばすようにしました。このようにしておけばOPTで高域
のアバレが発生しても、同じ終段に補正を入れて抑えれば、最終的にNFを掛けた状態での特性は広帯
域特性を維持出来ると思ったからです。
また出力動作の説明はあまり必要ないと思いますが、ごく普通のカソードフォロア直結の三結アンプ
となっています。そして6L6GCの規格表の三結動作例では2.4Wの出力となっているのですが、本
機では最大定格を守っているのに3W近い出力を得る事に成功しています。ドライブ段にもっと電流を
流して強力にドライブすれば3Wオーバーも可能ですが、今回は打消し効果の方がメインテーマなので
本機の出力としてはこれで十分と考えました。
という事で最終的に以下のような回路になりました。
この電源回路ですが、使用したメイントランスは過去に作ったアンプの流用で現在は廃番ですから、
今なら野口のPMC−100Mを使うのが良いでしょう。となると以下のような電源回路が合理的だと
思います。なお、トータルで600Vを超える高電圧を扱う事になるので、くれぐれも感電しないよう
に注意して作業して下さい。
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